この記事は広告を含みます。
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
目次

獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。
猫との生活の中で飼い主さんが注意しなければならないことが、ダニなどの外部寄生虫の予防や対策です。
ダニの寄生は致命的なダメージになりにくいイメージがありますが、寄生されることで不快感などの健康への負担が生じるほか、二次感染によって命に関わる病気にかかる危険性もあります。
実はあまり知られていないダニの寄生についてお話しさせていただきます。
猫につくダニの種類と刺された時の症状
ダニといっても様々な種類のダニが存在します。起こり得るトラブルもダニの種類によってさまざま。
飼い主さん自身がダニを見て判断することは難しくても、どんなダニによってどんな害があるのかを把握しておくことはとても大切です。
マダニ
自分の生活圏内にはあまりマダニは存在しないのでは……そんな風に思っていませんか?
マダニは道端や公園の草むらなどに存在している可能性があります。
自然の多い場所と比較すると都会では遭遇する可能性は低いかもしれませんが、野生動物などが落としていくこともあるため、まったく存在しないわけではありません。
吸血前のマダニは肉眼でも確認できますが、かなり小さいため、しっかりと被毛をかき分けて確認しないと発見することは難しいです。
吸血後は小豆大まで大きくなるため発見しやすくなるでしょう。
1匹の寄生程度では猫自身はあまり気にしない場合が多いですが、体質などによっては皮膚炎につながる場合もあります。
吸血部分を気にしていたり掻こうとしたりするなどの変化で飼い主さんが気づく場合もあります。
ツメダニ
ダニの寄生というと、一種類しかいないと思いがちですが、ダニには様々な種類が存在し、ダニの種類によって症状も様々です。
ツメダニはフケほどの大きさの小さなダニ。寄生によって、皮膚トラブルを起こします。
免疫力の低い若齢の個体が感染することが多く、直接の接触による感染や、そのほかの外部寄生虫によって媒介される場合もあります。
皮膚のかゆみや湿疹など、皮膚症状が主ですが、程度は個体によってさまざまです。
人間に感染して症状を引き起こす危険性もあるダニであるため、注意が必要です。
ミミヒゼンダニ
ミミヒゼンダニは通称「ミミダニ」などとも呼ばれる、耳に寄生する小さなダニです。
肉眼で確認することは難しいですが、耳垢などに含まれているため、顕微鏡で耳垢を採取して確認することが一般的です。
黒い耳垢のかたまりや強い耳の痒みが症状として特徴的であるため、耳掃除の際や、頭をよく振るなどの変化で気づくことが多いでしょう。
感染した猫との接触で感染する危険性が高く、多頭飼育のケースや、ほかの猫との接触で感染することが考えられます。
完全な予防は難しいかもしれませんが、早期発見をして治療をすることが負担軽減につながります。
ヒゼンダニ
「疥癬(かいせん)」とも呼ばれる皮膚トラブルを引き起こすダニ。非常に小さく、肉眼で確認することはできません。
猫がヒゼンダニに感染すると、強いかゆみを引き起こすことや、人間にも感染することが特徴です。
ヒゼンダニは角質層に穴を掘り、その中に存在します。そのため、疑わしい場合は皮膚を削り、組織を採取して顕微鏡で観察をすることで存在を確認します。
感染動物との接触や、生活環境にダニが存在することで感染します。
完全な予防は難しく、疑わしい症状が見られたら早期発見を行うことが負担を軽減する方法です。
ダニはどこで猫に寄生する?
外に出ないからといってダニに寄生される可能性がまったくないわけではありません。
実は、室内でもダニに感染する可能性は充分にあり得ます。
安心だと思っていても、感染する可能性のある生活をしている場合もあるでしょう。
室内で寄生|人やほかのペットからうつる
室内で生活をしていても、同居している動物や、飼い主さんが衣服につけて持ち込んでしまう場合があります。
特に、予防などを行っていない野良猫などのお世話をする場合、衣服に付着してしまう危険性があります。
室内で生活している場合であっても感染する可能性はあるため、必ず予防や対策をとるようにしましょう。
飼い主さん自身や同居動物に感染させないよう、対策をしっかりとることが大切です。
屋外で寄生|脱走時についてしまう
猫を室内で飼育していても、ふとした隙を見つけて脱走してしまい、屋外で寄生されてしまう場合があります。
特に空気の入れ替えや、暑い時期の扉の開けっ放し時などは猫にとっては脱走のチャンスとなり得るでしょう。
ダニの寄生だけでなく、交通事故や事件に巻き込まれるなど、外の世界には危険がたくさんあります。
猫が脱走しないために、日頃から脱走防止の対策をしていることはとても大切です。
玄関の脱走対策に適している「リリーブ」。折戸式のため飼い主さんの出入りもしやすい網戸です。金属製パネルを使用しているため、強度も充分。
活発な猫がよじ登ったり強い力で押したりして、網戸の破損やたわんでしまうリスクも少なくおすすめです。
ほかにも、危険がたくさんある猫の脱走対策について、以下の記事でも紹介しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
ダニの寄生による主な感染症
ダニからの寄生で起こる直接のトラブルは、皮膚炎や不快感などの命に直結するトラブルではない可能性が高いです。
しかし、ダニを媒介して起こる感染症は死に直結する危険性や、飼い主さんにも感染する可能性のある危険なトラブルがたくさんあります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
最近特に注目されているのが、頭文字をとって「SFTS」と呼ばれる重症熱性血小板減少症候群です。
ダニを媒介したウイルスの感染が原因となる感染症で、人にも感染する危険性のある怖い病気です。
SFTSウイルスを保有しているダニの寄生により、猫に感染し、さらに感染猫との接触によって飼い主さんや同居動物たちも感染します。
黄疸や元気消失、食欲不振や発熱などが見られることも多く、猫は致死率も高いとされています。
ライム病
ライム病はマダニが媒介する細菌感染症のこと。ボレリアという細菌が原因となり起こる感染症であり、人間も感染する人獣共通感染症です。
関節炎が特徴的であり、急に歩けなくなったり歩き方に変化が見られたりする場合があります。
また、腎臓に負担がかかることがあり、尿に変化が見られることも。そのまま治療せずに放置すると、死に至る危険性もある怖い病気です。
感染の可能性がある場合は、病原体に対する免疫反応を用いた検査を行うなどして感染を確定させます。
猫ヘモプラズマ感染症
あまり聞きなれない病気かもしれませんが、ヘモプラズマと呼ばれる細菌による感染症です。
ヘモプラズマは血液中の赤血球に感染し、破壊する病気です。重度の感染の場合、貧血が起こり、死に至る危険性があります。
ヘモプラズマに感染した猫の血液が体内に入ることで感染します。
そのため、感染猫からの咬傷や、感染猫を吸血したダニがさらに吸血することで、感染する可能性が高くなります。
貧血などの疑わしい症状が見られたら、血液を顕微鏡で観察することで確認します。
猫がダニに刺された時の対処法
猫がダニに刺されたことがわかって、パニックになる飼い主さんも多いでしょう。
しかし、まずは落ち着くことが大切です。慌てて取り払おうとすると、猫の体のトラブルにつながることもあります。
ダニに刺されている場合の正しい対処法をお話しします。
まずは触らず様子を観察する
皮膚トラブルや体表の観察で、ダニの寄生がわかった場合、どのようなダニが寄生しているかということを判断することは難しいでしょう。
もしかしたら飼い主さんにも感染する危険性のあるダニかもしれません。
まずはどの部位に寄生しているのか、寄生しているダニの数などを確認することが大切です。
そして触らずに、動物病院へ連絡をしましょう。
自然にはずれてくれるのであれば問題ありませんが、念のためダニがついていた場所を確認してもらうと安心です。
無理に取ろうとしない
マダニが寄生していることに気づいた際に、無理に取ろうとすることはリスクがあります。
なぜかというと、ダニが吸血をする口の部分だけが残ってしまい、皮膚トラブルなどにつながる危険性もあるからです。
もし取る場合は、マダニ除去専用のピンセットやアルコール、酢などを吹きかける方法が適切でしょう。
マダニ除去専用のピンセットやアルコールなどは、家庭には用意がない場合が多いと思います。
その場合、無理をせず動物病院を受診して取ってもらうようにしましょう。
動物病院での受診が必要なケース
ダニが寄生していることがわかったら、基本的には動物病院を受診するつもりでいた方が安心です。
飼い主さんのダニの予防方法が不十分な可能性もあり、もし万が一予防をしてなかった場合は、すぐに予防を始めた方が良い場合があるでしょう。
ただし、受診時に注意すべき点があります。ダニが寄生しているということは、他の犬や猫に感染させてしまう危険性があるということです。
まずダニの寄生が疑わしいということを電話で伝えたうえで、受診をしていいタイミングや受診方法を確認しましょう。
他の動物たちへの感染を最小限にすべく、受診時間などの提案がある可能性もあります。
猫をダニから守るための予防策
ダニが寄生してしまってからの対策ももちろん大切ですが、大きなトラブルになる前にきちんと予防をすることは大切です。
猫をダニから守れるのは飼い主さんしかいません。しっかりと対策をとって、猫が安心して健康に過ごせるように工夫してあげましょう。
動物病院で処方される予防薬を使う
一番大切なことは動物病院で処方される予防薬を使用することです。
昆虫にのみ作用する薬で、哺乳類には安全な成分であるため、効果は充分に期待することができます。
予防薬という名目ですが実際は駆虫薬であり、血液に含まれた薬の成分に対して、ダニが吸血時に反応をして駆除される仕組みになっています。
注意すべき点として、ダニが全くつかないように予防ができるわけではないため、処方された薬とあわせて予防できるような対策をとることが大切です。
室内環境を清潔に保つ(掃除・洗濯)
ダニを室内に持ち込んでしまった場合、床や家具などにダニを落としてしまう危険性があります。
室内に持ち込んでそのままにしないよう、こまめな掃除が大切です。
また、外で衣類につけて持ち込んでしまうケースも考えられます。
こまめに洗濯をすることや、おうちの猫と接する前に必ず洋服を着替えるなどの配慮が大切です。
特に、猫がよくいる場所やお気に入りの場所は念入りに掃除をすることをおすすめします。
外出から帰った後は体をチェック
外出から帰った後は、必ずダニの付着がないか、こまめに体を確認しましょう。
首の腹側やわきの下、内またの付け根など被毛が薄くやわらかい場所はダニを見つけやすいとされています。
肥大したマダニなどは、顔周りなどの被毛が多い場所でも気づきやすい傾向があります。
散歩の際は衣服を着用することなどが対策になる場合が多いですが、帰ったら必ず一度脱がせて確認することを怠らないようにしましょう。
虫除け対策としてスプレーなども有効とされています。
ほかの対策について、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
猫がダニに刺されたら、あせらず正しい対処を!
愛猫がダニに刺されたら、驚いてパニックになってしまう場合も多いでしょう。
しかし、どんな時も落ち着いて対処できるように知識を備えておくことはとても大切です。
ダニの寄生によってどんなリスクが起こり得るのか、飼い主さんはどのように対処すべきなのかということを知っておくと安心です。
まずは対策をとって、寄生しにくい環境を作ることが一番大切といえるでしょう。
併せて、万が一見つけた際はどのような対策をとるか考えましょう。
難しそうであれば無理をせずにかかりつけの先生に相談して、プロに安全に処置をしてもらうことをおすすめします。

獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。