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獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。
猫と生活する飼い主さんにとって高いハードルとなるのが、動物病院の受診なのではないでしょうか。
病院が嫌いな猫も多く、できれば動物病院へ行く機会が少なくできたらと思っている飼い主さんも多いと思います。
動物病院は病気になったら行くところというイメージが強いですが、実は健康な時こそ定期的に健康診断を受けることにとても大きな意味があります。
今回は、健康診断の必要性について解説していきます。
猫の健康診断が必要な理由
動物病院といえば、“病気になったら行く場所”というイメージがある飼い主さんも多いでしょう。
しかし、症状が現れてから受診することで病気が進行していたり、発見のタイミングによって行える治療の選択肢が減ってしまうこともあります。
最近では、早期発見や予防的な治療が大切だという考え方が一般的です。その理由についてご説明します。
病気の早期発見につながる
特に猫は、体調の変化を症状が進むまで隠しやすく、気づいたときにはすでに進行してしまっているケースも少なくありません。
早期発見をすることで治療の選択肢が広がったり、予後を良くできる可能性があります。
最近では、こうした理由から早期発見や予防的な治療が大切だという考え方が一般的になっています。
年齢と生活環境によってリスクは変わる
年齢や生活環境、その猫が生まれ持った体質などで病気が起こりやすいリスクは異なります。
特に中高齢を過ぎると、体内の器官の機能が低下します。機能低下の度合いや、低下が起こり始めたタイミングを把握するためにも、定期的な健康診断は大切です。
また、体調を崩したり、病気になりやすいリスクを上げる要素として予防接種の有無や肥満かどうかなども関連します。
全身状態のチェックを家庭と専門家と両方で合わせて行えると理想的です。家庭でのチェックは以下の記事を参考にしてみてくださいね。
健康診断を受ける年齢と頻度の目安
健康診断が大切な役割を持つことがわかりましたが、どのタイミングでいつ受けることが理想なの?という飼い主さんも多いのではないでしょうか。
絶対にこの頻度で受けておけば大丈夫という明確な目安はなく、それぞれの月齢や全身状態によって異なります。
子猫の場合(〜1歳)
特に子猫の場合、大きな先天性疾患がない限り、血液検査やレントゲン撮影などの精密な健康チェックをこまめに行う必要は少ない場合が多いです。
しかし、成長のために大切な時期であり、抵抗力や体力も未熟で体調を崩しやすい時期でもあります。
家庭でのチェックと併せて、専門家からも定期的なチェックをしてもらうと安心です。
また、猫にとって病院は嫌なことをされる場所という印象になりがちです。
若齢のころから、比較的嫌と感じにくい体重測定や聴診、触診などをすることで病院に対して苦手意識を減らすことができるでしょう。
1か月ごとに軽いチェックのつもりで受診できると安心です。
成猫の場合(1〜7歳)
成長が終わり、体力や全身状態が一番安定している時期です。
持病や大きな変化がない限り、健康な状態の平均的な値を知る意味で、年1回程度の健康診断が理想です。
シニアに近づくと体内の器官の機能低下が始まるため、早めにその兆候を発見することが目的となります。
体重などのチェックに加えて血液検査も行うと、変化が起こった場合に早期に気づきやすいでしょう。
また、かかりつけの先生と日常生活の様子を共有し、検査結果と照らし合わせることで、生活の変化と健康状態との関連性が明確になる可能性があります。
シニア猫の場合(7歳〜)
猫種にもよりますが、1年で約4歳分の年齢を重ねます。
シニア期を迎えた猫にとって1年は、体内の変化が大きく起こりやすい期間です。早期発見のために、半年に1回程度で検診をする習慣ができると安心でしょう。
検診の際、機能低下や持病が発覚することも少なくありません。
定期健診の間隔について、半年より短くするなどかかりつけの先生から指示がある場合もあります。
また、言葉を話さない猫にとって、飼い主さんからの日常生活の情報や、画像や血液検査による結果が全身状態を知るための貴重な手がかりとなります。
簡易の聴診や触診などだけでなく、検査を行う項目を増やしたほうが、より病気や全身状態の変化の早期発見につながる可能性があるでしょう。
健康診断でチェックされる内容
健康診断と一口にいっても項目はさまざまで、猫の月齢や全身状態に合わせて行うべき内容が異なります。
今まであまり検診をしたことがない場合は、健康診断の項目が複数組み合わさっている場合もあります。
愛猫に必要な健康診断項目について、分からない場合はかかりつけの先生と相談して決めることが大切です。
一般身体検査(体重、体温、歯・皮膚・毛)
一般的な身体検査は、最低限行うべき健康診断の内容としておすすめです。
獣医師の視診、触診、聴診、問診などをもとに、変化や気を付けるべき点を発見します。
家庭では嫌がって触らせてくれない猫も、診察台の上ではおとなしくなったり、普段見せてくれない口腔内をしっかりと観察できるケースもあります。
家庭でも観察できる項目もありますが、飼い主さん視点と獣医視点では見えるものも異なり、気づかなかったことに気づけるという利点があります。
猫にも負担がかかりにくく、すべてのライフステージで有意義なものとなるでしょう。
血液・尿・便検査
健康なときの状態を把握し、小さな変化にも気づくことが健康診断の目的であり、詳細を把握するためには数値化や変化を可視化することが大切です。
血液検査は多くの項目があり、内臓機能の状態や内分泌の状態、炎症の有無を数値で把握できます。
定期的に行うことで、正常値内なのか正常値からどの程度外れているのかを把握し、機能変化の程度を知ることが可能です。
症状が現れる前に数値の変化がみられる場合が多いため早期発見ができるでしょう。
尿検査では尿の比重や結晶の有無、膀胱内の環境などが把握でき、便検査では消化の状態や細菌の状態などがわかります。
免疫力の不充分な猫の場合、寄生虫やウイルスなどの感染の有無も把握可能です。
画像検査(レントゲン・超音波など)
血液検査や一般的な検査は、数値でわかりやすく全身状態を把握できる反面、これらの内容だけでは把握しきれない内容もあります。
例えば、心臓や内臓、骨の状態を視覚的に確認するためには、レントゲンや超音波検査が必要です。
CTやMRI検査などもありますが、猫の場合は麻酔下で行う必要があるため、もし定期的な画像検査を行うことを希望する場合、レントゲン検査や超音波などは有意義です。
麻酔などの体に負担のかかる処置が必要ないこともメリットの一つといえます。
レントゲン検査では、心臓の大きさや肺の状態、骨格の変化、消化器の状態について把握が可能です。
超音波検査では内臓の断面図が確認できるので、臓器内の腫瘍や心臓の内腔の弁膜の状態、肥厚の程度などが把握できます。
気になる症状がある場合や、中高齢になってくると腫瘍のリスクも若齢のころよりも上昇するため、選択肢の一つとして行っても良いでしょう。
健康診断の費用の目安
健康診断は大切ですが、費用面や生活への負担も飼い主さんにとっては大きな悩みになるでしょう。実際、健康診断にかかる費用は内容によって異なります。
一般的な視診や触診、聴診などの簡易な健康診断であれば病院によって差はありますが、数千円程度で済む場合が多いです。
血液・尿・便検査は、項目が増えるごとに費用も増える傾向があります。
項目数によりますが、血液検査であれば5,000円〜2万円程度、尿検査であれば3,000円〜5,000円程度、便検査も数千円〜1万円程度で可能な場合が多いです。
しかし、病院によって価格は異なるため、かかりつけの病院に事前に確認しておくと安心です。
また、検査項目がセットになっていることで費用が安く済む場合や、健康診断をリーズナブルに受けられるキャンペーンをしている時期があるなど、病院によって健康診断の仕組みが異なります。
受診する際は、予算などを含めかかりつけの病院に相談してみてください。
動物病院の選び方
かかりつけの動物病院を見つけておくと、愛猫との生活で起こり得る健康トラブルの相談や、長生きのためのアドバイスなど、健康管理面で心強い協力者になってくれる可能性が高いです。
ここからは、どのように動物病院を選べばよいのかポイントを解説します。
病院を選ぶ際に、重視する点は飼い主さんによって様々ですが、以下のようなポイントを押さえるとよいでしょう。
- 猫への接し方が安心できる(慣れている)
- 病気や治療について丁寧に説明してくれる
- 話しやすい、相談しやすい
- 診療における統一性がある(複数の獣医師の診察なのか、一人の獣医師の診察なのか)
- 家から近く通院しやすい
診療及び猫のケアを行う上で大切なのは、愛猫の状態を飼い主さん自身もしっかりと把握し、獣医師と連携しながら家庭でも治療を行っていくことです。
猫の生涯を通じて、かかりつけの動物病院のスタッフとは一番多く会話をする機会があるかもしれません。
話しやすさやインフォームドコンセントの分かりやすさ、充実した説明かどうかなどが、飼い主さんの理想として思い描くものに近い病院が選ばれることも多いです。
例えば、入院などの大きな処置が必要になるケースは、かかりつけの先生との対話がとても大切になります。
また、飼い主さん同士の口コミ評価などで決めるというケースもあるでしょう。
ほかにも移動手段が自動車ではない場合、距離など通院のしやすさが決め手になることもあります。
定期的な健康診断は愛猫の長寿・健康につながる!
動物病院は病気になったら受診するところというイメージの飼い主さんも多いでしょう。
しかし、定期的な健康診断を行い、猫の状態に応じて適切な検査を選ぶことで健康で長生きすることにつながります。
飼い主さんだけで愛猫の健康を支えようとすると負担に感じることもありますが、かかりつけの動物病院を見つけ、定期的に健康診断を受けることで、専門家という心強いパートナーと二人三脚で健康管理ができます。
健康診断の結果からは、気をつけるべき点や生活の工夫も見えてきます。まずはかかりつけの病院を決め、愛猫に合った健康診断の習慣を作ることをおすすめします。

獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。